導入事例の書き方・作り方
7ステップ完全ガイド【取材から公開まで】

依頼のしかたから取材・執筆・公開後の活用まで、BtoB導入事例の全工程を制作現場の視点で解説。
インタビュー質問リストと構成テンプレートは無料ダウンロードできます。

導入事例の書き方は、企画・取材先の選定・依頼・取材・執筆・確認・公開後の活用という7つのステップに分けられます。そして出来ばえの差は、文章のうまさよりも、取材を始める前にどこまで決めておけたかで大きく決まります。

「会社で導入事例を作ることになったけれど、何から手をつければいいか分からない」。実際に制作を1人で任され、そう戸惑っている担当者の方は少なくありません。ふだんの業務と並行しながら、取材の段取りから原稿、公開後の活用までを一手に引き受けるのは、思っている以上に大変な仕事です。

導入事例とは、自社の商品・サービスを導入した顧客の「課題・選んだ理由・成果」を顧客の言葉でまとめたコンテンツのことです(定義や種類のより詳しい整理は導入事例とは何かで解説しています)。BtoBの商談で信頼を高め、成約を後押しする強力なコンテンツです。ただ、取材の依頼から公開・活用まで工程が多く、途中で止まったり、作ったのに使われずに終わったりすることが少なくありません。だからこそ、迷わず進めるための「手順」と「型(テンプレート)」が役に立ちます。

本記事では、25年以上・年間150件以上のB2Bコンテンツ制作に携わってきた実務の視点から、はじめて1人で担当する方でも迷わないように、導入事例を「完成させる」だけでなく「成果につなげる」までの全工程を解説します。1人で回しきれないと感じたら、取材や執筆だけを外部に頼るという選択肢もあります。まずは全体像をつかんでいきましょう。

この記事でわかること

  • 7ステップの全体像と、工程ごとにつまずきやすい場所
  • 依頼・確認のメール文例と、取材で数字を引き出す質問のしかた
  • 段階別(文章のみ/写真込み/PDF/動画)にかかる工数と費用の目安
  • 公開後の見直しサイクルと、営業での使われ方

取材で使う質問リストは、こちらから無料でダウンロードできます。まずは7ステップの全体像から確認してください。

導入事例の書き方は7ステップに分けられる(全体像)

全体像を把握しないまま進むと、「インタビューは終わったが原稿が上がらない」「公開直前に取材先から差し戻しが来た」といった事態に陥ります。まず7ステップと標準スケジュールを確認してください。

7ステップの流れと、各ステップでつまずきやすい点

7ステップの流れと、止まりやすい場所。1〜3(色の付いた工程)が取材前の準備にあたります。日程が読みにくいのは、相手の都合が入る3と6です。
ステップ作業内容標準期間担当
1. 戦略設計誰に・何を伝えるかを決める1〜3日マーケ担当
2. 取材先選定顧客リストから取材候補を選ぶ1〜3日営業+マーケ
3. 取材依頼依頼メール送付・日程調整1〜2週間担当営業
4. 取材当日インタビュー・撮影(60〜90分)当日ライター+カメラマン
5. 原稿作成構成・執筆・初稿作成5〜7日ライター
6. 確認・公開取材先への確認依頼・修正・公開1〜2週間担当営業+マーケ
7. 公開後活用営業資料への転用・効果測定(詳しくは後述)公開後随時営業+マーケ

取材日程調整から公開まで、標準で4〜8週間かかります。年度末や繁忙期に取材依頼が重なると遅延しやすいため、制作年間計画に組み込んでおくことを推奨します。

成否の8割は「取材の前」で決まる理由

手戻りが起きるのは、たいてい執筆の工程ではありません。「社名を出せないと後から言われた」「効果を示す数字が出てこない」「公開したが営業に共有されていない」。これらはすべて、取材が終わったあとでは取り返しにくく、取材前に決めておけば防げるものです。

取材を始める前に、次の4つだけは先に固めてください。①この事例で何を伝えたいのか、②どこに掲載し誰に配るのか、③社名・担当者名・顔写真をどこまで出せるか、④効果として出せる数字は何か。とくに④は当日その場で思い出せるものではないため、事前に先方へ用意をお願いしておく必要があります。

「導入後の満足度が高い」とだけ書かれた事例は、読者の社内稟議には使えません。同じ内容でも「工数を月平均40時間削減、コスト換算で年間約200万円の改善」のように数字で書かれていれば、検討中の企業の担当者がそのまま決裁者を説得する材料にできます。私たちが取材で数字の深掘りに最も時間をかけるのは、この「稟議に載るかどうか」の差が、そのまま受注への貢献度を分けるからです。

1人で担当することになったときの進め方の順序

1人で全工程を抱える場合、7つを均等に進めようとすると必ず途中で止まります。おすすめは、自分だけで完結する1〜2(企画・取材先の選定)を数日で終わらせ、相手の予定が絡む3(依頼)をできるだけ早く投げてしまう進め方です。依頼から取材日までは1〜2週間空くことが多いので、その待ち時間に質問の準備や構成の下書きを進めておくと、全体の期間が縮まります。

逆に、企画を練り込みすぎて依頼が遅れると、取材日が翌月にずれ、公開が1か月単位で後ろ倒しになります。まず動かすべきは相手のいる工程です。導入事例そのものの位置づけや他のコンテンツとの違いから確認したい場合は、導入事例とはもあわせてご覧ください。

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戦略設計:誰に何を伝えるかを決める

最も大切なのが、最初の「戦略設計」です。目的が定まらないまま取材を始めると、公開しても「使われない事例」になりがちです。1人で進める場合こそ、次の2点だけは先に決めてから動き出してください。

  1. この事例で何を伝えたいのか:自社サービスの何を強みとして打ち出し、何をアピールしたいのか
  2. 導入企業にどんな変化があったのか:導入によって、具体的にどんな変化が起きたのか(できる限り定量的な数字で示す必要があります)
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取材先の選定:協力を得やすい顧客を選ぶ

取材先選びでは、「関係が良好な顧客」であることも大切です。導入事例は、ある意味で導入企業との共同作業です。先方に協力の意思がなければ実現は難しいですし、関係が良好だということは、そもそも導入したサービスがうまくいっている証拠でもあります。つまり、導入事例を書く下地がすでにできているのです。

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取材の依頼と、断られたときの対応

取材の依頼は、担当営業から普段のやり取りに添えて打診するのが自然です。「何のための事例か(目的)」「所要時間の目安(60〜90分程度)」「公開前に原稿を全文確認いただけること」を最初に伝えると、相手も引き受けるかどうかを判断しやすくなります。

もし断られた場合は、無理に説得しないでください。取材を断られる背景には、サービスに対して何か思うところがある可能性があります。まずは一度真意を確かめ、アフターフォローをしっかり行うなど、関係の立て直しを優先することをおすすめします。実際の依頼メールの文例と、断られたときの代わりの進め方は、後述の「準備:目的と掲載先を決め、取材先に依頼する」で具体的に紹介します。

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取材当日の流れと質問テンプレ7問

インタビューは、あらかじめ質問を組み立てておくと、引き出せる情報の質が上がります。以下の質問テンプレ7問をベースに、取材先の業種・課題に合わせてアレンジしてください。また、質問リストは遅くとも取材の1週間前には先方の担当者へ送付することをおすすめします。当日いきなり聞かれて答えられるものではありませんし、事例に必要なのは「感想ではなく、具体的な効果(できれば数字)」です。だからこそ、先方に協力いただき、正確な数字を準備してもらう必要があります。

  1. 御社の事業内容・ご担当業務を教えてください
  2. 今回ご導入される前の課題・お悩みは何でしたか?
  3. 弊社サービスを知ったきっかけは何でしたか?
  4. 導入の決め手になったポイントは何でしたか?
  5. 実際に使い始めてみてどうでしたか?
  6. 業務上で最も改善されたことは何ですか?(数値で教えていただけると嬉しいです)
  7. 今後、弊社にどんなことを期待しますか?

取材で使う切り口の質問は、導入事例インタビューの質問12【台本ではなく切り口】で詳しく解説しています。質問リストは無料ダウンロードできます。当日どの順番で聞くか、数字をどう引き出すかは、後述の「取材:聞く順番と、数字を引き出す質問のしかた」にまとめました。

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原稿作成と構成テンプレート

導入事例の原稿は「課題→導入→効果」の3部構成が基本です。以下の構成を雛形にしてください。

セクション内容文字数目安
① 企業プロフィール取材先の事業・規模・担当者紹介200〜300字
② 課題(ビフォー)導入前の具体的な課題・ペインポイント400〜600字
③ 選定理由なぜ弊社サービスを選んだか300〜400字
④ 導入・活用の様子実際の使い方・社内での定着プロセス400〜600字
⑤ 成果(アフター)数字を含む定量・定性的な成果400〜600字
⑥ 今後の展望担当者の一言・期待・推薦コメント200〜300字

各セクションの記述例を含む構成テンプレート(Word形式)も無料ダウンロードできます。項目ごとの書き方や、型ごとの雛形は導入事例のテンプレートで詳しく解説しています。

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取材先の確認・公開フロー

原稿が完成したら、担当営業を経由して取材先に確認を依頼します。この工程で大切なのは、いつまでに確認してほしいかの目安を伝えること(確認期限)と、どこまで直せるか(修正の範囲)を先にすり合わせておくことです。ただし、期日を強く迫りすぎないよう注意してください。先方は普段の業務の合間を縫って原稿を確認してくれています。広報部門がある企業では、社内のコンプライアンス確認などでさらに時間がかかることもあります。催促しすぎると、事例は完成したのに、導入いただいたサービスそのものに悪い印象を残しかねません。

  • 確認依頼メールには「○月○日頃までにご確認いただけますと幸いです」と、お願いベースで目安の期日を添える
  • 「事実誤認やニュアンスの違和感があれば、遠慮なくお知らせください」と、直せる範囲を先に伝えておく
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公開後の活用:営業資料への転用と効果測定

公開はゴールではなく、営業の現場で使われて初めて成果につながります。商談前に送る、提案書に添えるといった具体的な組み込み方は、このページ後半の「営業現場への組み込み方」で説明します。あわせて、公開したページがどれだけ見られているかは、サーチコンソールとGA4で月に1回確認すれば十分です。見方は「公開後の効果の見方(SEOとGA4)」にまとめました。

制作現場で使っている資料を無料ダウンロード

年間150件以上のB2Bコンテンツ制作の現場で実際に使っている資料です。登録不要でダウンロードできます。

インタビュー切り口の質問12

導入事例の取材の起点になる質問を12問に整理(Word形式)。そのまま先方への事前送付にも使えます。

フォーム記入してダウンロード

構成テンプレート(雛形)

構成6要素の文例つき完全雛形(Word形式)。埋めていくだけで導入事例の原稿が形になります。

ダウンロード

準備:目的と掲載先を決め、取材先に依頼する

ここが最も差の出る工程です。目的、掲載先、依頼のしかたの3つを先に固めておくと、あとの工程で迷わなくなります。

何のために作るのかを1行で決める(営業配布・サイト掲載・提案書添付)

導入事例は使い道が広いぶん、目的を決めずに作ると、どこにも届かない中途半端な記事になります。まず「主にどこで使うか」を1つ選んでください。1本の取材から、次のような形に展開できます。

  • 営業資料として配る:商談で「近い業種のお客様はこう活用しています」と示すと、相手に安心してもらいやすくなります。読み手は先方の担当者と決裁者です。
  • Webサイトに掲載する:購入を迷っている段階の人が「本当に効果が出るのか」を確かめる材料になります。検索からの流入もここで生まれます。
  • ダウンロード資料にする:会社名やメールアドレスと引き換えに配布し、見込み客の情報を得るための材料になります。PDF化が前提になります。
  • 提案書に添える:提案の裏づけとして使います。数字が入っていることが特に重要になります。

主な使い道が決まると、必要な素材も決まります。営業配布が中心ならPDF化を前提に、サイト掲載が中心なら検索されそうな言葉を見出しに入れる、というように準備が変わります。

取材をお願いする相手の選び方と社内の巻き込み方

候補を思いつきで選ぶと、依頼の段階でつまずきます。営業担当に「最近うまくいっているお客様はどこですか」と聞くところから始めてください。判断の材料は次の3つです。

  1. 関係が良好か:導入事例は導入企業との共同作業です。協力の意思がなければ実現しません。
  2. 成果が出ているか:うまくいっていること自体が、事例を書く下地になります。
  3. これから狙いたい業種・規模と近いか:読ませたい相手に近い企業の話ほど、商談で効きます。

社内の巻き込み方にもこつがあります。担当営業にとって取材依頼は「顧客に手間をかけてもらうお願い」ですので、丸投げされると身構えます。依頼メールの文面をこちらで用意し、送るだけの状態で渡すと、協力を得やすくなります。

依頼メールの文例(初回打診・日程調整・当日の持ち物連絡)

実際に使える形で3通の文例を挙げます。担当営業の普段の文体に合わせて調整してください。

1通目:初回の打診

件名:導入事例へのご協力のお願い
いつもお世話になっております。
このたび弊社では、実際にご利用いただいているお客様の声を導入事例として紹介する企画を進めております。○○様に日頃の活用の様子をお聞かせいただけないかと考え、ご連絡いたしました。
お時間は60分から90分程度、オンラインでも対応可能です。公開前には原稿を全文ご確認いただけますので、内容に相違があれば修正いたします。社名を伏せた形での掲載もご相談いただけます。
ご検討のうえ、ご都合をお聞かせいただけますと幸いです。

2通目:日程調整と事前のお願い

件名:取材日程のご相談と事前のお願い
ご快諾いただき、ありがとうございます。下記の候補日からご都合のよい日時をお知らせください。
・○月○日(○)10:00〜/14:00〜
・○月○日(○)13:00〜/16:00〜
あわせて、当日お伺いする質問を添付いたします。とくに導入前後で変わった数値(作業時間、件数、コストなど)は、その場では思い出しにくい内容かと存じますので、事前にご確認いただけますと大変助かります。おおよその数字で構いません。

3通目:前日のご連絡

件名:明日の取材について(○月○日 ○時)
明日はよろしくお願いいたします。当日は弊社から○名(ライター、撮影担当)が伺います。
お手数ですが、貴社ロゴのデータをお送りいただけますでしょうか。記事の冒頭で使用いたします。
写真は、○○様のお写真とお仕事の様子を撮影させていただく予定です。顔出しが難しい場合は、後ろ姿や手元のみの撮影に変更いたしますので、当日お知らせください。

3通に共通するのは、所要時間、公開前の確認、断りやすさ、この3つを最初に伝えている点です。相手の負担と不安を先に下げておくほど、承諾は得やすくなります。

取材を断られたときにどうするか(書面回答・匿名掲載・数値のみ掲載への切り替え)

断られること自体は珍しくありません。大切なのは、押し返さずに形を変えて提案することです。相手の事情に合わせて、次の3つの代替案を用意しておいてください。

  • 書面での回答に切り替える:「時間が取れない」が理由の場合に有効です。質問を5問程度に絞ってメールで送り、返信をもとに構成します。分量は短くなりますが、事例としては成立します。
  • 匿名で掲載する:「社名を出せない」が理由の場合です。「製造業・従業員300名規模・関東」のように、業種と規模と地域だけを示します。読み手は自分に近いかどうかを判断できます。
  • 数値と使い方だけを載せる:広報の確認が重い企業では、担当者の発言を載せず、導入の経緯と効果の数字だけを短くまとめる形なら通ることがあります。

それでも難しい場合は、無理に説得しないでください。取材を断られる背景には、サービスへの不満が隠れていることもあります。まず真意を確かめ、フォローを通じて関係を立て直すほうが、結果的に次の事例につながります。

取材:聞く順番と、数字を引き出す質問のしかた

当日の60分から90分をどう使うかで、原稿の書きやすさが決まります。ここでは質問リストの作り方ではなく、その場での聞き方を扱います。

課題→検討→導入→効果の順に聞くと話がつながる

聞く順番は、相手が思い出しやすい順に並べます。おすすめは時間の流れに沿った4区切りです。

  1. 課題(導入前):何に困っていたか。ここを厚く聞けた事例ほど、読者が自分ごとにできます。
  2. 検討:どうやって知り、何と比べ、何が決め手になったか。
  3. 導入:使い始めたときの様子、社内に広がるまでの経緯。
  4. 効果:何がどれだけ変わったか。ここで数字を確認します。

この順で聞くと、相手は思い出しながら話せますし、そのまま原稿の流れにもなります。効果から先に聞くと、話が「よかったです」で終わってしまい、後戻りしにくくなります。

「効果はいかがですか」では数字が出ない。具体化する聞き返しの型

数字が出ないのは、相手が非協力的だからではありません。数字は「思い出す」ものではなく「計算する」ものだからです。その場で計算できる形に分解して聞くのが、こちらの仕事になります。

  • 作業単位に分ける:「1件あたり、以前は何分くらいかかっていましたか」「その作業は月に何件ありますか」と分けて聞き、あとから掛け算にします。
  • 人数と頻度に分ける:「その業務は何名で担当されていましたか」「週に何回発生していましたか」。
  • 比較の起点を作る:「導入前は、同じことをどうやっていましたか」と聞くと、変化が具体的に語られます。
  • 幅で答えてもらう:「正確でなくて構いませんので、おおよそ3割減ったのか、半分になったのか、感覚で教えてください」。
  • その場で言い換えて確認する:「つまり月あたり約40時間の削減ということですね」と返し、相手に確認してもらいます。この一言があると、原稿での表現がぶれません。

それでも数字が出ない場合は、変わった場面を具体的に描いてもらいます。「以前は毎週金曜の夜に集計していた」「問い合わせのたびに担当者を探していた」といった描写は、数字がなくても読者の判断材料になります。

相手が答えにくい質問への配慮(他社比較・失敗談・社内事情)

聞きたくても、そのままでは答えにくい質問があります。角度を変えれば話していただけることが多いです。

  • 他社との比較:社名を出させる聞き方は避け、「選ぶときに重視された点は何でしたか」と条件を尋ねます。
  • 導入時の苦労:「失敗しましたか」ではなく「これから導入される方が気をつけるとよい点はありますか」と、後進へのアドバイスの形にします。
  • 社内の事情:「反対はありましたか」ではなく「社内に広めるときに工夫されたことはありますか」と聞きます。
  • 金額:具体額が難しければ「投資に対して見合ったと感じられたのはいつ頃ですか」と、時期に置き換えます。

答えにくそうな様子があれば、「この部分は原稿から外しても構いません」と伝えてください。安心して話せる場を作ることが、結果的に良い発言を引き出します。

録音と記録の実務(文字起こしの扱い、当日のメモの取り方)

  • 録音は必ず許可を取る:冒頭に「記録のために録音してもよろしいでしょうか。原稿作成にのみ使用します」と伝えます。
  • 録音機は2つ用意する:ICレコーダーとスマートフォンの両方を回します。片方が止まっていた事故は実際に起こります。
  • メモは全部書かない:話をさえぎらずに聞くことが優先です。数字と、印象に残った言い回し、そして「あとで確認する点」の3つだけを書き留めます。
  • 文字起こしは全文でなくてよい:自動文字起こしを使う場合も、使うのは発言の引用部分だけです。全文を整形する時間を、構成を考える時間に回してください。
  • 終了前に確認する:数字と役職名、社名の表記(正式名称か略称か)を、その場で読み上げて確認します。

質問リストそのものの設計は、導入事例インタビューの質問12【台本ではなく切り口】で詳しく解説しています。取材前に先方へ送る質問リストは、こちらから無料でダウンロードできます。

記事の型を選ぶ:ストーリー型・一問一答型・短尺型の使い分け

型を決めてから書き始めると、執筆時間が目に見えて短くなります。ここでは「どれを選ぶか」の判断だけを扱います。

取材ができる場合とできない場合で、選べる型が変わる

まず、手元にある材料で選べる型は決まります。

  • ストーリー型:課題から効果までを地の文でつなぎ、要所に発言を入れます。60分以上の取材ができた場合に向きます。読み物として最も読まれますが、書く手間は一番かかります。
  • 一問一答型:質問と回答をそのまま並べます。書面回答しか得られなかった場合や、担当者の言葉をそのまま届けたい場合に向きます。執筆の負担は軽くなります。
  • 短尺型:企業概要、課題、効果を1画面程度にまとめます。取材が短時間しか取れなかった場合や、本数をそろえたい場合に向きます。

1本目から重い型に挑む必要はありません。短尺型で数本そろえてから、反応のよかったものをストーリー型に作り直す進め方も現実的です。

よく使われる呼び方との対応:Q&A形式・インタビュー形式・コメント形式・動画形式

導入事例の形式は、Q&A形式・インタビュー形式・コメント形式・動画形式といった呼び方で分類されることもあります。本記事の3つの型とは次のように対応します。

  • Q&A形式:質問と回答を並べる形。本記事の一問一答型と同じものです。
  • インタビュー形式:取材をもとに地の文と発言で構成する形。ストーリー型がこれにあたります。
  • コメント形式:担当者の短い推薦コメントを中心にまとめる形。短尺型の一種で、お客様の声に近い使われ方をします。
  • 動画形式:取材の様子や担当者の語りを映像でまとめる形。記事とは工程が異なるため、進め方は導入事例の動画制作で解説しています。

読み手が営業先か検討中の担当者かで型を決める

使い道からも型は決まります。営業が商談で配るなら短尺型かPDFが向きます。相手はその場で目を通すため、長い読み物は読まれません。サイトに掲載して検索から集めるならストーリー型が向きます。読み手は自分から調べに来ているため、詳しさが価値になります。導入を決めた理由を丁寧に伝えたい場合は一問一答型が向きます。発言の生々しさが残るためです。

どの型でも外せない共通の骨格(課題・導入・効果)

型が変わっても、外してはいけない3つは同じです。導入前に何に困っていたか(課題)、なぜそれを選んだか(導入)、何がどう変わったか(効果)。この3つが埋まっていない事例は、どれだけ文章が整っていても商談では使えません。逆に、この3つがそろっていれば、短い記事でも十分に機能します。

そのまま使える雛形と、書くべき項目の定義は導入事例のテンプレートにまとめています。作りたい型が決まったら、そちらの雛形に沿って書き進めてください。

執筆:見出し・タイトルの付け方と、読まれる文章にする工夫

取材のメモを前から順に文章にしていくと、まず書き上がりません。先に骨組みを決め、最後にタイトルを付けるのが早道です。

タイトルは「誰が・何をして・どうなったか」で決まる

事例のタイトルは、凝った表現よりも事実の並びで決まります。誰が(企業・業種)、何をして(導入したもの)、どうなったか(成果)の3つを入れると、一覧に並んだときに選ばれます。

  • 成果の数字を入れる:「問い合わせ対応の時間を月40時間削減」
  • 読み手が自分を重ねられる情報を入れる:「従業員300名の製造業」
  • 担当者の言葉を借りる:印象的な一言があれば、副題として添えます

迷ったら、社名と成果だけの素っ気ない形で構いません。「株式会社○○様:○○の導入で△△が半分に」で十分に伝わります。

見出しだけ読んでも筋が通る状態にする

導入事例は、最初から最後まで読まれるとは限りません。見出しだけを拾い読みする人が多いため、見出しを上から並べたときに、課題から効果までの話が通じるかを確認してください。「課題」「導入の経緯」「効果」といったラベルだけの見出しでは、拾い読みでは何も伝わりません。「紙の申請書を手作業で集計し、月末は残業が続いていた」のように、内容そのものを見出しにします。

発言と地の文の配分、引用の整え方

発言をそのまま並べただけの原稿は、読みにくくなります。目安として、状況の説明は地の文で書き、判断や感想は発言で見せると整理できます。

  • 言い直しは整える:「えー」「あの」や重複した言い回しは削ります。意味を変えない範囲で整えるのは、失礼にはあたりません。
  • 語順は変えても意味は変えない:読みやすさのために語順を入れ替えるのは構いませんが、断定していないことを断定に変えてはいけません。
  • 長い発言は分ける:ひとつの発言が5行を超えるようなら、途中に地の文を挟みます。
  • 数字は地の文に置く:発言の中の数字は記憶違いが起きやすいため、確認した数字は地の文で書き、発言では実感を語ってもらう形が安全です。

公開前の確認と掲載許可の取り方(先方チェックの依頼文例と修正対応)

原稿ができたら、担当営業を経由して取材先に確認を依頼します。ここで大切なのは、期限を押しつけないことと、どこまで直せるかを先に伝えておくことです。

確認依頼の文例

件名:導入事例の原稿ご確認のお願い
先日はお時間をいただき、ありがとうございました。原稿がまとまりましたのでお送りいたします。
事実の誤りや、意図と異なる表現がございましたら、遠慮なくお知らせください。数値の記載についても、公開して差し支えない範囲かどうかをご確認いただけますと幸いです。
ご都合のよろしいときに、○月○日頃までにお返事をいただけますと助かります。お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。

  • 修正の範囲を先に伝える:「事実の誤りとニュアンスの違和感」は直せる、と明示しておくと、際限のない書き直しになりません。
  • 催促は控えめに:先方は通常業務の合間に読んでくれています。広報や法務の確認が入ると数週間かかることもあります。強く迫ると、事例は完成してもサービスそのものの印象を損ねます。
  • 大きく削られたときの受け止め方:数字が消された場合は、代わりに「何がどう変わったか」の描写を足せないか相談します。全部を諦める必要はありません。
  • 公開後の御礼を忘れない:公開のURLと、あわせて反響を後日お伝えする旨を添えると、次の取材につながります。

写真・図版と、段階別にかかる費用と工数の内訳

同じ導入事例でも、文章だけで仕上げるのか、写真を入れるのか、営業用のPDFや動画まで作るのかで、増える作業と金額はまったく違います。どこまでやるかを決めるための内訳を、制作現場の実感に沿って示します。

文章のみ/写真込み/PDF化/動画つき、それぞれで増える作業と費用の目安

制作内容費用レンジ備考
文章のみ(インタビュー+原稿)5万〜15万円写真は自社撮影・既存素材使用
文章+写真撮影セット15万〜25万円プロカメラマン同行・人物・オフィス撮影含む
文章+写真+PDF制作20万〜35万円営業資料用PDFのデザイン・制作を含む
動画制作込みフルパッケージ内容により大きく変動(個別見積もり)インタビュー動画(3〜5分)+記事+PDF

先に、段階が上がるごとに「何の作業が増えるのか」を並べます。金額は上の表と同じ範囲で、下の段の作業を含んだ合計です。

段階前の段階から増える作業増える工数の目安費用の目安(合計)
① 文章のみ取材・執筆・確認対応(写真は自社撮影か既存素材)5万〜15万円
② 写真込み撮影の同行、撮影リストの作成、撮影許可の確認、写真の選定半日の撮影+事前調整2〜4時間15万〜25万円
③ PDF化営業配布用のレイアウト、図版の作成、印刷用データの調整デザイン2〜3営業日+修正のやり取り20万〜35万円
④ 動画つき動画の撮影・編集、話す内容の台本づくり、字幕とテロップ編集だけで2〜4週間、取材当日も長くなる内容により大きく変動(個別見積もり)

金額も工数も、いずれも制作の内容と体制によって変わる一般的な目安です。判断のこつは、いきなり④から始めないことです。まず①で1本作り、反応のよかった事例だけを②③へ引き上げていくと、無駄になる制作費が出にくくなります。

費用を左右するのは「撮影の有無」と「PDFデザインの有無」が大きく、文章のみなら5万円台から対応できる会社も存在します。一方、動画まで含めると費用の幅は大きく広がります。動画版の進め方と考え方は導入事例の動画制作で解説しています。見積りの比較のしかたや相場の全体像は導入事例制作の費用相場にまとめています。

制作期間の目安(4〜8週間)

費用と同じく「どのくらいかかる?」と聞かれる制作期間は、取材日程の調整がボトルネックになります。顧客の承認プロセスが長い企業(大企業・上場企業)では、取材依頼から公開まで3〜4ヶ月かかるケースもあります。

写真と図版で何を見せるか(撮影リストの例)

意外と見落とされがちな「撮影の実務」について、現場の視点から解説します。

取材記事のアイキャッチや担当者の顔写真は、スマートフォンでの撮影でも公開自体は可能ですが、おすすめしません。事例記事は「実在の企業が実名で語っている」ことが価値の中心にあり、人物と表紙のカットの質が記事全体の信頼感を左右するからです。年間150件以上の制作現場でも、予算を絞る場合にまず残すのは人物カットのプロ撮影です。

  • 撮影リストを先に作る:「人物メイン3カット・作業風景3カット・ロゴまたはエントランス1カット」を事前にカメラマンへ渡すと、限られた時間で必要な絵がそろいます
  • 記事のどこで使うかを決めておく:表紙(アイキャッチ)、担当者の紹介、効果の説明の3か所に当てはめると、撮るべきカットが決まります
  • 写真で見せられないものは図にする:業務の流れが変わった事例は、導入前と導入後の作業の流れを並べた図が有効です
  • 取材先での撮影許可:オフィス内・製品・社員の顔出しそれぞれの可否を事前に確認します

特に「社員の顔出し」は担当者個人の判断ではなく会社の方針で決まることが多いため、依頼メールに「顔出しなし・シルエット対応も可能」と選択肢を記載しておくと、承認が通りやすくなります。

撮影を依頼する場合の費用の考え方

カメラマンに依頼する場合、費用は「拘束時間」で区切って考えると見通しが立ちます。1社の取材に合わせた撮影であれば半日(3〜4時間)の枠で収まることが多く、当社が関わる案件では半日で5万〜7万円程度を目安にしています。1日枠が必要になるのは、複数拠点をまわる場合や、動画も同時に撮る場合です。

  • 加算されやすい項目:遠方への交通費と移動時間、撮影機材の追加、レタッチ(写真の色や明るさの補正)の枚数、当日の急な追加カット
  • 著作権と使用範囲:撮影写真をWebだけでなく営業資料やSNSでも使うのかを、発注前に書面で確認しておきます。あとから使用範囲を広げると追加費用が発生することがあります
  • 相見積りの比べ方:金額だけでなく「拘束時間」「納品カット数」「レタッチの有無」を揃えて比べないと、同じ条件の比較になりません

社内で撮るときに最低限おさえること

予算の都合で社内撮影にする場合も、次の4点を守るだけで見え方がかなり変わります。

  • 窓の光を横から当てる:逆光を避け、顔に影が落ちない位置に立ってもらいます
  • 背景を片づける:書類やコード類が写り込むだけで、記事全体の印象が落ちます
  • 横向き(横長)で撮る:Webでも資料でも使い回しやすく、あとからの切り抜きにも耐えます
  • 同じ構図で多めに撮る:表情の良し悪しは後から選べばよいので、1カットにつき数枚は残しておきます

取材から撮影・デザインまでを一括して任せたい場合は、導入事例制作サービスでまとめてお引き受けしています。

公開後に何をするか:配布・二次活用と、効果の見かた

「公開して終わり」が最も多いパターンですが、事例の価値は公開後に伸びます。まず営業に届け、次に数字を見て、決めた時期に手を入れる。この3つを回すところまでが書き方の一部です。

営業資料・提案書・メールへの載せ方

公開したページのURLを社内に流すだけでは、事例は使われません。次のように、営業の実務の中に置き場所を作ります。

  • 商談前に送る:訪問やオンライン商談の前に「近い業種の事例です」と一言添えて送っておくと、相手が予習でき、当日の説明がスムーズになります。
  • 提案書・見積書に添える:提案の裏づけとして、状況の近い事例を1〜2本、資料に同封します。
  • 稟議・社内検討の資料に同封する:先方の社内で決裁を通す人が読む前提で、数字の入った事例を選んで渡します。
  • 見込み客へ個別に送る:問い合わせや名刺交換をした相手に、その人の課題に近い事例を選んで送ります。

効果測定:まず見る3つ

公開したあとは、次の3つをゆるやかに見ておけば十分です。1人で担当している場合、毎週こまかく見る必要はありません。月に1回まとめて確認すれば足ります。

  1. 検索からの流入:検索でどれくらい見られているか(Google Search Console。公開後3ヶ月ごろから伸び始めることが多い)
  2. 読まれ方:どれくらいの時間読まれているか(GA4のエンゲージメント時間。長く読まれていれば、内容が届いている目安)
  3. 営業で使われたか:半年に1回、営業メンバーに「最近この事例を商談で使ったか」を聞く

GA4とサーチコンソールで見る指標

「数字を見ましょう」と言われても、どの画面を開けばいいか分からない、という声をよく聞きます。検索での効果(SEO)はGoogle Search Console(GSC)、サイト内での読まれ方や成果はGA4という、どちらも無料のツールで確認できます。見る場所をしぼって紹介します。

検索での見られ方は Google Search Console(GSC)で見る
GSCの「検索パフォーマンス」を開き、上部の「ページ」で該当の事例ページのURLにしぼり込みます。すると、そのページがどんな検索語(クエリ)で表示され、クリックされたかがわかります。見るのは主に「表示回数(検索結果に出た回数)」「クリック数」「掲載順位」の3つです。狙っていなかった検索語で表示されていれば、次の記事のヒントにもなります。

閲覧数・読まれ方・成果は GA4 で見る

  • 閲覧数と読まれ方:「レポート」→「エンゲージメント」→「ページとスクリーン」を開き、該当URLの「表示回数」と「平均エンゲージメント時間」を見ます。エンゲージメント時間が長いほど、しっかり読まれている目安です。
  • 成果(問い合わせなど):問い合わせや資料請求を、あらかじめGA4で「コンバージョン(キーイベント)」として設定しておくと、達成数を見られます。事例ページがきっかけになったかまで正確に追うには細かい設定が必要ですが、まずは「事例ページを見た人の動き」と「サイト全体の問い合わせ数」を並べて眺めるだけでも十分に役立ちます。

公開直後は数字が小さくて当然です。1回ごとの数字に一喜一憂せず、3ヶ月から半年の変化で見てください。GSCは「入口(どんな検索で来たか)」、GA4は「中の様子(どれくらい読まれ、問い合わせにつながったか)」と役割を分けて覚えると、迷いにくくなります。

見直しのタイミング(公開1か月後・3か月後・1年後にそれぞれ何を見るか)

事例は「古くなる」という弱点があります。特にシステム・SaaSなど変化の早い分野では、1〜2年でサービス名や料金体系が変わり、事例の内容が古びます。以下の見直し設計を事前に取材先と合意しておくと、長く使える事例資産になります。

  • 1か月後:まず社内を見ます。営業が実際に使ったか、使いにくい点はなかったかを聞き、必要なら見出しや冒頭の要約を直します。検索からの流入はこの時期はまだ動きません。
  • 3ヶ月後:公開後の反響・アクセスを取材先に報告し、追加コメントや数値の更新があれば反映します。
  • 1年後:「その後どうなりましたか?」の続報インタビューを依頼します(追加費用は低めで、取材先も喜ぶことが多いです)。
  • 3年後:サービスの更新や顧客の成長を反映した全面リライト、または新しい事例への切り替えを検討します。

あわせて、月1回でよいので「どの事例が響いたか」「どんな事例が欲しいか」を営業に聞き、次に作る1本へ反映してください。作る順番が決まると、事例づくりが単発の作業でなくなります。

事例が増えてきたときの並べ方と導線

3本を超えたあたりから、「どこに何があるか分からない」という別の問題が出てきます。一覧ページを作り、読み手が自分に近い1本にたどり着ける並べ方にしてください。

  • 並べる軸は2つまで:業種と課題、あるいは業種と企業規模。軸を増やすほど選びにくくなります。
  • 一覧には結果を書く:社名だけを並べず、「作業時間を月40時間削減」のように成果の一言を添えると、読まれる本数が変わります。
  • 各事例からの出口をそろえる:記事の最後に問い合わせ、資料請求、関連する事例の3つを置いておきます。
  • 並べ方の実例:他社サイトでの見せ方は導入事例集の作り方と実例で紹介しています。

取材から公開、営業への展開までをまとめて任せたい場合は、導入事例制作サービスでも対応しています。

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自社で作るか、外注するか(途中まで自社という選び方もある)

全部を自社で抱えるか、まるごと外に出すか。この二択で考えると行き詰まります。7ステップのうち一部だけを外に出す、という中間の選び方が現実的です。まずは4つの軸で全体像を見てください。

評価軸内製外注
コスト(1本あたり)人件費換算でおよそ7〜18万円相当(下の試算を参照)5万〜35万円(内容による)
スピード業務並行で遅くなりがち専業のため安定して早い
品質担当者スキルに依存制作会社の品質基準に依存
継続性担当者異動で止まるリスクあり担当変更の影響を受けにくい

7ステップのうち、どこを外に出すと楽になるか

外注に向くのは「時間がかかる工程」と「経験の差が出る工程」です。逆に、社内の事情や取材先との関係が絡む工程は、自社で持ったほうが早く進みます。

ステップ向いている担当理由
1. 企画(誰に何を伝えるか)自社営業戦略と直結するため、外部だけでは決められません
2. 取材先の選定自社顧客との関係の温度は社内にしか分かりません
3. 取材の依頼自社普段のやり取りがある担当営業から打診するのが最も通ります
4. 取材外注(同席は自社)聞き方の経験差が最も出ます。数字の深掘りは慣れが要ります
5. 執筆外注1本8〜12時間かかり、通常業務と最もぶつかります
6. 確認・公開自社(どちらでも可)先方への催促の加減は、関係性を知っている側が握るのが安全です
7. 公開後の活用自社営業の現場に置くところまでは社内の仕事です

取材と執筆だけ外注し、社内確認と公開は自分で行う進め方

実際にご相談が多いのが、この形です。企画と取材先の選定、依頼までを自社で行い、取材当日と原稿を外部に任せ、取材先への確認と公開、公開後の活用を再び自社で持ちます。時間を最も食う執筆(1本8〜12時間)が外れるため、担当者1人でも月1本のペースを保ちやすくなります。

この形にする場合、外部に任せる範囲を最初にはっきりさせておくことが大切です。「文字起こしはどちらが行うか」「写真の手配は誰がするか」「修正は何回までか」を決めておかないと、境目の作業が宙に浮きます。

かかる時間を金額に換算して比べる

「自分で作った方が安い」と感じるかもしれませんが、社内で1本作ると、思っている以上に時間がかかります。1人の担当者が企画から公開まで通しで担った場合、たとえば次のくらいの工数がかかります(あくまで一般的な目安で、内容や慣れによって上下します)。

工程おもな作業目安の時間
企画・設計誰に何を伝えるか、構成を決める2〜4時間
取材先の調整候補選び・打診・日程調整3〜5時間
取材の準備質問設計・事前の数字ヒアリング依頼2〜3時間
取材当日インタビュー(60〜90分)+前後の移動・準備2〜4時間
執筆文字起こし・原稿作成・推敲8〜12時間
確認対応取材先への確認依頼・修正のやり取り3〜6時間
公開作業入稿・画像・体裁の調整2〜3時間
合計1本あたりおおよそ22〜37時間

この時間を人件費に置き換えて考えます。前提として、担当者の時給を(給与や諸経費を働く時間で割った目安として)3,000円と置くと、1本あたりの人件費はおよそ7万〜11万円相当になります。より専門性の高い担当者(時給4,000〜5,000円相当)なら、9万〜18万円相当まで上がります。

これを外注費と並べると、判断の目安が見えてきます。文章のみの外注なら5万〜15万円(本文の費用表を参照)ですので、社内で1本作る手間を人件費に直した金額と、外注費はおおむね同じ範囲に収まります。

判断の目安

  • 数ヶ月に1本のペースなら、内製も選択肢です:たまにしか作らないなら、人件費と外注費は大きく変わりません。社内に情報が集まりやすい利点も活きます。
  • 月1本以上、続けて作るなら外注が割安になりやすいです:担当者の時間が他の業務を圧迫し、人件費に「他の仕事が進まない分」も乗ってきます。品質のムラや、担当者が代わったときに止まるリスクも避けられます。

上の金額はすべて、前提を置いたうえでの一般的な目安です。自社の給与水準・作業の慣れ・外注先の料金によって変わりますので、ご自身の時給の目安に置き換えて試算してみてください。

内製と外注の詳しい比較は内製か代行か?徹底比較を、外注時の役割分担は制作代行・外注ガイドをご覧ください。

外注先に渡すとスムーズな情報

最初の打ち合わせで次の5点がそろっていると、やり取りの往復が減り、初稿の精度が上がります。

  • この事例で伝えたいこと:どの強みを打ち出したいのかを1〜2行で
  • 取材先の基本情報:事業内容、導入した製品・プラン、導入時期、担当部署
  • すでに分かっている数字:削減できた時間、件数、金額の概算
  • 出せない情報の範囲:社名、担当者名、顔写真、具体的な金額のうち、どこまで公開してよいか
  • 参考にしたい事例:自社・他社を問わず「こういう雰囲気にしたい」と思う記事のURL

かけた費用が見合うかの、素朴な考え方

制作費が見合うかどうかは、難しい計算をしなくても、素朴に見積もれます。たとえば外注で1本15万円かかったとします。その事例を営業資料として商談に持参し、受注を1件でも後押しできれば、多くのBtoB商材では1件の受注から得られる粗利が、その費用を上回ります。さらに、公開した事例ページは検索から見込み客を継続的に呼び込む資産にもなります。

つまり、「1件の受注に貢献できれば元が取れる」という感覚で判断して差し支えありません。受注単価や粗利率は事業によって異なりますので、自社の1件あたりの粗利と制作費用を並べて考えてみてください。

制作会社選定の3つのチェックポイント

  1. B2B事例の制作実績があるか:B2CのWebメディアとB2B事例では必要なスキルが全く異なる
  2. ライターとカメラマンが連携しているか:取材と撮影を別々に発注するとコスト・手間が2倍になる。なお弊社では、取材にディレクターも同行します
  3. 確認フロー・著作権の取り決めが明確か:契約書で確認権・修正回数・著作権帰属を確認する

制作会社選びの詳しい視点は制作会社の選び方で、当社の制作実績や得意分野はコンテンツ制作の強みで紹介しています。

失敗パターン3つと対策

B2Bコンテンツ制作の現場で繰り返し目撃する失敗パターンを3つ紹介します。いずれも「作り始める前の設計」で回避できます。

パターン1:掲載・公開の許可が下りない

よくある経緯:取材は終わり、原稿も仕上がった。ところが公開前の確認を送ったところ「一度、法務を通します」と返答が来て、そこから何週間も待つことになった。さらに「社名は出せなくなりました」「担当者の顔写真は差し替えてください」と次々に変更が入り、公開できたのは数ヶ月後。こうした遅れは珍しくありません。背景には、法務・広報のチェック、競合に手の内を知られたくないという懸念、担当者個人の情報を出すことへの不安、他社との秘密保持契約(NDA)との兼ね合いなど、担当者ひとりでは動かせない事情があります。

対策:許可の話は、取材が終わってからではなく、依頼の段階で済ませておきます。依頼メールの時点で「公開してよいか」「社名をどこまで出せるか」「担当者名と顔写真を載せてよいか」「法務チェックが必要か」を確認してください。もし社名を出せない可能性があるなら、最初から「業種・従業員規模・地域だけを出す」匿名の形を提案しておくと、引き受けてもらいやすくなります。

パターン2:成果を示す数字が出ない

よくある経緯:「導入後は業務がスムーズになりました」「皆さんに満足していただいています」。公開された事例を見ると、具体的な数字が一つもない。商談でURLを送っても「よさそうですね」で終わってしまう。これは取材そのものの失敗というより、取材の設計の失敗です。数字が出ない背景には、社内でしか見られない数値を外部に出せない、顧客側の確認で数字が削られる、そもそも導入の目的が売上やコスト削減ではなく社内の情報共有だった、といった事情もあります。

対策:取材の1〜2週間前に、担当営業から取材先へ「数字のヒアリング依頼」を別に伝えておきます。「削減できた作業時間」「コスト削減額の概算」「導入前後で変わった数字」を先に用意してもらえれば、取材当日は確認と深掘りに集中できます。どうしても数字が出せない場合は、「確認作業が減った」「営業が説明に迷わなくなった」のように、導入前後で変わった場面を具体的に描くと、数字がなくても読者の判断材料になります。取材と原稿を外部に頼む場合でも、この事前ヒアリングだけは社内で押さえておくと、事例の質が大きく変わります。

パターン3:公開後に使われず、放置される

よくある経緯:苦労して1本を公開した。ところが営業はその事例の存在を知らず、商談で使われない。アクセスも伸びないまま、いつの間にか内容が古くなっていく。さらに、事例制作を1人で回していた担当者が異動すると、外注先の連絡先も取材先との関係もその人の中にしかなく、制作そのものが止まってしまう。「課題・決め手・効果」がはっきり書けていない事例ほど、読まれず・使われないまま放置されがちです。

対策:作って終わりにせず、公開直後に営業へ「どんな商談で使えるか」を一言添えて共有します(具体的な活用のしかたは後述の「営業現場への組み込み方」で解説します)。あわせて、制作の手順・テンプレート・外注先の連絡先・取材先の担当者情報を、個人のメールや名刺ではなく社内で共有できる場所(社内wikiや共有ドライブなど)に残しておきます。外注先との契約も、担当者個人ではなく会社として結んでおくと、担当が代わっても止まりません。

よくある質問(FAQ)

Q導入事例の書き方で、最初に決めるべきことは何ですか?
「何のために作るのか」を1行で決めることです。営業が商談で配るのか、サイトに掲載して検索から集めるのか、提案書に添えるのかで、聞くべき内容も原稿の長さも変わります。目的が決まっていないまま取材に進むと、公開はできても使われない事例になりがちです。
Q社内で1本書く場合、どのくらいの時間がかかりますか?
企画から公開まで1人で担当した場合、おおよそ22〜37時間が目安です。内訳は企画2〜4時間、取材先の調整3〜5時間、取材準備2〜3時間、取材当日2〜4時間、執筆8〜12時間、確認対応3〜6時間、公開作業2〜3時間です。慣れや内容によって上下しますので、本文の工数表をご自身の状況に置き換えてご覧ください。
Q取材先(顧客)にインタビューを断られたらどうすればいい?
取材を断られる背景には、何かしらサービスに対して思うところがある可能性があります。無理に説得するのではなく、まず真意を確かめ、アフターフォローを通じて関係を立て直すことをおすすめします。そのうえで、依頼時に「所要時間の目安・公開前の全文確認・社名非公開も対応可」を伝えておくと、先方の負担や不安を減らせます。
Q動画事例と記事事例、どう使い分けますか?
商談時の信頼補強(短い時間で担当者の顔・声を見せる)なら動画、SEO・リード獲得・詳細情報の提供なら記事が適しています。予算が許せば1回の取材から動画と記事の両方を制作するのが最もコスパが良いです。
Q取材で数字を引き出すには、どう聞けばいいですか?
「効果はいかがでしたか」と聞くだけでは、感想しか返ってきません。「導入前は1件あたり何分かかっていましたか」「その作業は月に何件ありますか」のように、作業単位と件数に分けて聞き、あとから掛け算で効果を出せる形にします。数字は当日その場で思い出せるものではないため、取材の1〜2週間前に質問リストを送り、先方に用意していただくことが前提になります。
Q取材時の写真は誰が撮ればいいですか?コストは?
表紙写真・人物写真はプロカメラマンへの外注を推奨します。半日5万円が相場で、撮影リスト(人物3カット・作業風景3カット・ロゴ1カット)を事前に渡すと効率よく撮影できます。スマホ撮影も不可ではありませんが、記事の信頼感に直結するため、費用対効果は高いと考えています。
Q公開後にやるべきことは?
公開後は、まず営業チームに「どんな商談で使えるか」を添えてURLを共有し、提案書への添付や見込み客への個別送付など、営業の実務で使える形にします。あわせて、検索での見られ方(Google Search Console)や閲覧状況(GA4)を月1回ほど確認します。3ヶ月後には数値の報告と追加コメントの更新、1年後には続報インタビューの依頼が、理想的な運用サイクルです。
Q事例の効果はどう測りますか?
オーガニック流入(GSC)・滞在時間(GA4)・営業参照率の3指標を軸に評価します。営業参照率は半年に1回、営業メンバーへのヒアリングで「最近商談でこの事例を使ったか」を確認する方法がシンプルで有効です。自社の事例の現在のスコアを知りたい場合は無料診断ツールをご利用ください。

まとめ:成果が出る導入事例の3条件

  1. 戦略から始まっている:「誰に何を伝えるか」を最初に決め、取材先選定・構成・活用法すべてに一貫性がある
  2. 数字とストーリーが両立している:定量的な成果(数値)と担当者の生の言葉(ストーリー)が揃った事例は、決裁者を動かす力がある
  3. 公開後の運用が設計されている:作りっぱなしでなく、3ヶ月・1年単位のアップデート計画と営業連携が組まれている

導入事例は一度仕組みを作ってしまえば、最も費用対効果の高いBtoBコンテンツです。まずは1本、戦略設計から始めることをお勧めします。

そもそも導入事例の目的やメリット、活用シーンから確認したい方は 導入事例とは を、書き上げた原稿の点検には 質問リストの無料ダウンロード をあわせてご利用ください。

ご相談・お問い合わせ

「1人ではとても回しきれない」「どんな構成にすれば良いか分からない」「社内に取材や執筆の手が足りない」という場合は、お気軽にご相談ください。25年以上・年間150件以上のB2Bコンテンツ制作実績を持つ私たちが、取材設計から撮影・原稿・公開後の活用設計まで一貫してサポートします。取材や執筆だけを部分的にお任せいただくことも可能です。